僕は統合失調症

30歳の時に発症した統合失調症の発病・入院・回復の記憶

草間彌生のカボチャ


先週、高校時代からの友人と2人で、瀬戸内海に浮かぶ香川県直島を旅した。ベネッセの運営する美術館とホテルのある島で、アートマニアにとっては憧れの島。安藤忠雄設計の魅力的な美術館・ホテル、島の集落の中の空き家・廃屋を再生した空間で現代アートの数々の作品に触れることができる。まるで島全体が美術館。天気にも恵まれ、のんびりアート三昧の楽しい旅だった。


地中美術館は中でも圧巻で、山の地下に巨大なコンクリートの美術館が埋め込まれるように建設されている。照明はトップライトからの自然光で、巨大なモネの「睡蓮」などが鑑賞できる。1日目の夕方と2日目の午前中2回訪れたが、時刻により館内の雰囲気が全く変化するのだ。


ジェームズ・タレルの「オープン・スカイ」という作品は、天井に大きな四角い穴が開いた空間で、切り取られた空の表情の移ろいを鑑賞するというもの。夕方6時からのイベントでは1時間近く、淡いブルーから濃紺へと変化する空を見続ける。最後には漆黒の空に星が輝き出し、宇宙そのものを感じるような荘厳な気持ちに包まれた。


この島のシンボルは、浜辺に佇む黄色いカボチャのオブジェ。草間彌生の作品だ。彼女は少女時代から統合失調症に苦しめられながら世界的なアーティストとなり、そのオブセッションから生み出される水玉模様を主要なモチーフにしている。このカボチャの表面にも執拗な黒い水玉が描かれている。一見かわいらしい島のシンボルとして、直島を訪れる人々に愛されているが、やはり僕はその作品の内奥に彼女の病を感じ取ってしまう。


旅に出るといつもより多めに睡眠薬を飲む。それでも刺激的な感動に寝付かれづ、友人と語り合う島の夜であった。

ベネッセアートサイト直島
草間彌生ホームページ

直島 瀬戸内アートの楽園 (とんぼの本)

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