僕は統合失調症

30歳の時に発症した統合失調症の発病・入院・回復の記憶

発病編

人生の終わり

自分が正気を失っていると自覚した後も幻聴はおさまらなかった。みんなにテレパシーの能力があるという考えは否定できたが、自分の家系には特別にテレパシーの能力が備わっているのだと考えるようになった。母が若いとき精神病だったのだという妄想もその頃…

歩き続けた夜②

夜道を歩き続けるうちに、僕の精神はさらに昂揚していった。最初は人影を見ると遠ざかり、交番の前は迂回したりしていたのだが、次第に周囲が気にならなくなり、ずんずん歩いて行くようになった。僕は誰の注意も引かず、見とがめられもしないことが不思議に…

歩き続けた夜①

ライブからしばらくして、僕の様子がおかしいと心配したN君夫婦と香織が家に来てくれた。僕はN君夫婦をNクリニックの精神科医だと思っていたので、二人は何もかも理解しているのだと思っていた。しばらく家で話しをしてから、家を出て近くのファミレスに4人…

文子に関する妄想

家族と一緒に過ごしていると、絶え間なく幻聴が聴こえるようになった。幻聴は全て対面している相手の心の声として聴こえ、僕はテレパシーの存在を信じるようになった。今までテレパシーを感知できなかったのは自分が障害者だったからで、普通の人は肉声とテ…

腐っていく身体

僕たちのバンドの演奏が終わり、次のバンドの演奏が始まった。しばらく聴いていたが、ひどい疲れを感じた僕は香織と両親に「もう帰ろう」といってライブハウスを出た。サックスを持って帰るのも忘れていた。今夜はうちに泊まるつもりで、香織は一緒について…

幻聴の渦巻くライブ

東京でバンドのライブのある日、午前中に僕は両親に付き添われ、近くの町の精神科のクリニックを受診した。不眠が続き、言動にも奇異なところがあらわれはじめたのを見て親が早めの対応をしたのだ。身内に精神障害者がいなかったなら、こんなに早い精神科の…

不眠の続く夜

叔母が死んだ翌日、納棺のために親族が集まった。そして叔母の家を片付け葬儀の準備。通夜の晩には朝まで一睡も出来なかった。告別式の日の夜にも不眠は続き、憔悴し神経が昂ぶった。叔母の娘〈従姉妹)は、そのころ社会問題化していた自己啓発セミナーのト…